猪瀬直樹氏の『ジミーの誕生日』を読んだ。アメリカの占領政策の一端が覗えておもしろかった。

 猪瀬直樹氏の『ジミーの誕生日 アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」』という副題が付いている。さらに帯には昭和23年12月23日零時1分20秒、死刑執行開始! 皇太子明の誕生日に、なぜA級戦犯7人は処刑されたのかとある。さらに帯の反対面には、マッカーサーが天皇明仁に仕掛けた時限装置とも出ている。本のタイトル、副題、帯を見るだけでも昭和天皇の誕生日になぜA級戦犯7人に死刑が執行されたのか、その謎解き的要素もあると気付く。
 著者の元には感想をはじめさまざまな手紙が届く。その中にある女性からのには、その祖母のものと思われる日記に「ジミーの誕生日の件、心配です」という一行があり、その謎解きをして欲しいというのがあった。興味をそそられた著者はその女性に会い、想像通りの上流階級の出だとわかる。祖母というのはある子爵夫人で、その女性の父はどうやら学習院で昭和天皇と同窓生だと言うことも分かる。そこからがルポライター猪瀬氏の本領が発揮されて、数個の日付との関連が明らかにされてゆく。
 「ジミー」とは皇太子時代の家庭教師バイニング夫人が学習院で英語を教える際に生徒1人1人に英語の名前を付けていったが、皇太子に付けられた名前だった。それが分かるとその誕生日12月23日に何があったか調べると、東条英機をはじめ7名に死刑が執行された日だとわかる。また昭和天皇の誕生日の1946年4月28日にはA級戦犯とされた28名に起訴状が伝達された日だ。今上天皇にはこの2つの日がくる度に何があったか嫌でも思い出させる仕組みになっているのだ。我々にはこの2つの日付がそれぞれ昭和天皇、今上天皇の誕生日であることは知っているが、それ以上の意味が込められているとは知らなかった。
 アメリカの占領政策で一番の問題は天皇の処遇だ。マッカーサーは最初から天皇無罪を主張していたが、それに納得しない他の連合国やアメリカの世論をどう押さえ込むかに苦慮した。最も効果的な方法はできるだけ早く新らしく憲法を制定することだとして草案提出を急がせた。1946年のことだ。最初はリンカーンの誕生日の2月12日までに作れとスタッフに指示、それは日本側の骨子が出る前日だった。そしてそれを翌13日に日本側に見せ、22日までに返事を要求した。その日は初代大統領ワシントンの誕生日なのだ。新憲法で天皇は象徴としての地位に留まり、4月3日に極東委員会は「天皇不起訴」を決めた。
 このように謎解きをされるとなるほどそうかと思う。そう言えば終戦の調印式が行われたのはアメリカの戦艦ミズーリ号の甲板上だが、停泊した場所はペリー提督の船の停泊地だったという。
 子爵夫人とアメリカの法律家で軍政にも関わった人物のラブストーリーも出てくるが、これは刺身のつまみたいなものだろう。
 やはり猪瀬氏の筆力はすごい。一気に読ませてくれる。都知事よりも文筆家の方が合っていると思う。またマッカーサーと天皇が初めて会見した写真で、マッカーサーがふんぞり返っているのだが、これは別に偉ぶってのことではなく、禿頭が写らないようにしているのだという副官の話を聞くと、あの写真を見る印象も大分異なってくる。こういうこともおもしろい。

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